風の気のままに記

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help リーダーに追加 RSS 七重八重 花は咲けども山吹の 実の一つだに 無きぞ悲しき

<<   作成日時 : 2008/04/13 15:41   >>

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 最近、雨が多い。
 昨日は時折ぱらつく雨の中、山道を歩いた。山道を歩きながら、茶呑みの戯れ言に読んでもらおうと、こんなことを考えた。
 春雨と言うと、しとしとと降る優しい雨をイメージするが、最近の雨は優しさの微塵もなく、荒々しい降り方をすることが多い。
 作者も本のタイトルも忘れたが、以前、SFもので読んだのだが、地球の大気中の二酸化炭素の量がこのまま増え続けると、やがては金星のようになる。金星は二酸化炭素を主成分とする大気に包まれているため温室効果が生じ、地表温度は、金星よりも太陽に近い水星よりも高く、常に暴風に見舞われているそうである。
 最近の荒ぶる天候を見るにつけ、地球の状況が金星に近づきつつあるのではあるまいか?と。これも人間達が、地球に辛く当ってきたことに対するしっぺ返しか?
 子供も愛情をもって育てれば愛情豊かな子が育つが、痛めつけられて育てられると、やはり思いやりに欠けた人間に育ちやすいものだ。
 以前係わりを持った中学校のサッカー部の顧問で、連日生徒達を殴ったり蹴ったりしてトレーニングしていた体育教師がいた。そこで、「お前は何故に暴力で子供たちにサッカーを教えるのだ?」と詰問したところ、「自分も高校時代、監督に地面に叩きつけられ、スパイクで顔を踏みつけつけられて指導されてきた。そのおかげで県大会にも出場でき、今の自分があると思っている。だから自分も同じように教えれば、やがては生徒達は分かってくれるはずだ。」としゃあしゃあと、その体育教師は言ってのけた。呆れ果てた私は、「お前はとんだ裸の王様だ、お前のような奴に大事な子供を預けることはできない!」とどやしつけてやったことがあったが、その体育教師もまた子供の頃、暴力教師に出会ってしまった被害者の一人であったのかと思ったものだ。
 こうも荒々しい天候が続くと、地球を傷め続けて来た人間の一人として、素直に反省せざるを得ない。

 雨が降っていると、どうしても出かけるのが億劫になるものだ。そんな時、「孤鞍衝雨・・・(こあん あめをつきて・・・)」と漢詩の一節が口をついて出てくる。これはもう何十年もの間、雨降りに出かけることを尻込みする自分を奮い立たせるための自身への掛け声となっている。
 何故ならば、孤鞍衝雨・・・と言う光景がとても勇ましく見えるし、またこの言い回しの響きがとても格好いいからである。この言葉を何度か心の中で呟くと、なんとなく、一人馬に乗って雨の中を颯爽と出かける気になれるのである。尤も現代のことであるから、乗り物は馬ではなく車と言うことになるが。

          孤鞍衝雨叩茅茨      こあん あめをついて ぼうしをたたく
          少女為遺花一枝      しょうじょ ためにおくる はないっし
          少女不言花不語      しょうじょはいわず はなかたらず
          英雄心緒乱如糸      えいゆうのしんしょ みだれて いとのごとし

 この漢詩は中学一年の英語の授業で習った。
 私の中学一年次の英語教師は漢詩が大好きで、英語と漢文の文法、つまり言葉の羅列順序が良く似ていると口癖のように言っていた。で、日本語とまるで違う英語の単語の並び順に対する生徒達の違和感を払拭するため、「むしろ日本語が特異な言葉で、世界標準はこう言う並べ方なんだよ。」と教えるために英語の授業時間に漢詩の勉強となったのであろうと推測する。なんともゆとりのある授業であった。何のためか分からぬが、授業日数を減らしただけの現在逆の意味で使われている“ゆとり教育で”育った若者達には、想像もつかない授業風景ではなかろうか?

 この英語教師は、肝心な英語よりもむしろ漢詩を教えることに熱心であったように記憶している。おかげで、英語は好きになれなかったが漢詩は好きになった。(^-^ )
 孤鞍は一般的には「こうあん」と読む人が多いようであるが、その英語教師は「こあん」と読んだ。私も「こあん」の方が響きが良くて好きだ。また、孤鞍は単騎のことであるが、この詩の場合は太田道潅を指し、江戸城を築城した武将とも・・・『ええっ!江戸城を造ったのは徳川家康ではなかったのか?』と、それを聞いた、当時の小学校から上がったばかりの新入生は思ったものだ。
 おかげで、この先生の英語の授業時間では、英語と国語と漢文と情操教育と歴史を勉強することができた。
 
 ある時、生徒の誰かが、「ティーチャー」とその先生に呼びかけた。すると先生は「先生を呼ぶときはミスターだ。」と教えてくれた。以来その先生はミスターサエグサと呼ばれるようになった。
 ノバック先生が主演のアメリカから渡ってきた人気テレビドラマ・「ミスターノバック」が放映されたのは、その翌年であったが、ミスターサエグサの教え通り、アメリカでは○○先生と呼ぶ時はミスター○○になるんだなと改めて得心が行ったものである。

 ミスターサエグサは言った。「茅茨(ぼうし)とは、茅葺の粗末な家のことだ。」と。そして更に続けた。「茅葺、知ってるか?見たことある人?田舎の方に行けば、今でも残っているところもある。屋根が、あの藁のような植物でできた家だ。」
 ミスターサエグサは漢文の話になるとどんどん熱がこもって来る。真剣な顔つきで解説を続けた。
 「ある日、太田道灌が鷹狩りに出かけて、突然の雨に襲われた。道潅は馬を走らせ帰路を急ぐが、雨はひどくなるばかり。そこで、偶然見つけた農家で簑を借りようと立ち寄った。道潅が蓑を貸してくれと言うと、少女が出て来て無言のまま黄色く咲いた山吹の一枝を差し出した。道灌には、その意味がわからず、不機嫌のまま帰館した。帰館してから、ことの顛末を家臣に話したところ、それは『七重八重 花は咲けども山吹の 実の〈簑〉一つだになきぞ悲しき』という古歌で返答したのだと教えら、英雄の心緒乱れて・・・英雄とは太田道潅のことだよ。心緒とは心の動きのことだよ。 つまり、太田道潅の心の中は糸のように揺れ動いたんだよ。」と。

 ミスターサエグサは「心緒」は「しんしょ」と読まず「しんちょ」と読んだ。私もここは「しんちょ」の方が好きだ。
 「少女は、花が咲いても実のつかない山吹にたとえて、『貧しくて、この家には簑の一つさえありません。』と、ゆかしく断ったのだ。この時、道灌は自分の無学を恥じ、以来大いに発奮して勉学を重ね、文武両道の偉大な武将となったのだ。だから君たちも恥をかかないように大いに勉強をしなければいけない。」と、ミスターサエグサは解説してくれたのであった。以来、私はこの漢詩が好きになり、ことある毎に心の中で諳んじてきたものである。

 そう言えば、最近ヤマブキを見かけなくなった。昔は住宅街を歩いていると、よく、生垣からこぼれるように咲いているヤマブキを見かけたものだが、最近ではめっきり見かけなくなった。
 試しに、仕事で出かけたついでに探してみたが、身近なところには見つからなかった。
 随分と探し回って、やっと一軒、生垣から黄色い花がこぼれおちている家を見つけた。

画像

画像

 同じヤマブキでも八重ではなく一重のヤマブキであった。
 八重のヤマブキは園芸種と言う事であるので、住宅地にはむしろ八重のヤマブキが多かろうにと思っていたが、また一つ疑問に思うことが頭に浮かんできた。
 太田道潅の逸話に出てくる和歌は後拾遺和歌集にある兼明親王の和歌「七重八重花は咲けども山吹の実の一つだに無きぞあやしき」が元となっているそうだが、平安時代に既に園芸種が存在したのだろうか?
 そう一つの疑問が頭をかすめるとまた次の疑問が頭をもたげる。
 待てよ、室町時代の・・・(批判覚悟で敢て悪い表現を使うと)水飲み百姓の娘に、太田道潅も知らなかった兼明親王の和歌を知っているだけの教養が本当にあっただろうか?道潅をも凌ぐ教養の持ち主と言うことは、もしかしたら京を追われた没落貴族の娘であろうか?それにしても、家臣に教えられるようでは情け無い。いや、少女に花を差し出されたくらいで心を乱す男が英雄と言えるのか?それに、どうせもうずぶ濡れであろう。今更蓑を着てどうするのだ?である。
 まあ、そんなことはどうでも良いが・・・太田道潅の逸話はマユツバと言うのは事実かもしれない。しかし、この一つの漢詩が私に教えてくれたものは計り知れないほど多い。
 そう言えば、ミスターサエグサは「花一枝」を「はなのひとえだ」と読んでいたが、私もこれには賛成である。物語に登場する教養豊かな農家の娘と、まだ大成前のちょっと間抜けな英雄と言う取り合わせからすると、読み方が硬すぎる。情景からしてもっと柔らかい読み方が良いだろう。
 それに「少女ためにおくる」となると、「我が家の窮状を分かって頂戴。」と押し付けている感じになり、少女のイメージが崩れる。やはり、この場合の少女は下心なしにさりげなく花を差し出すイメージにしたい。
 そこで、漢文の文法上の制約は何一つ知らぬ無学な私としては恥を恐れず、次のように読みたい。

          こあん 雨をつきて ぼうしをたたく
          少女 花のひとえだをおくる(をなす)
          少女言わず 花語らず
          英雄のしんちょ乱れて糸の如し

 七重八重・・・は、博学多才な兼明親王が、科学技術の発達により、物質面では八重の花のように、絢爛豪華に咲き誇っているように見えるが、実のところ、心の面では貧しく実りのない現代社会の有り様を予見して詠んだ歌ではあるまいか。

 http://kazenokinomamaniki.at.webry.info/200804/article_7.html
 こちら↑に続いておりますので、よろしかった続いてお読みください。

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コメント(18件)

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又・・・風さんの楽しいお話に触れる事が出来ました。
山吹ですぐ口を突いて出るのが
山吹の清げに藤のおぼつかなきさましたる
すべて思い捨てがたき事多し   です、ごく一般的でスイマセン。笑
風さんのお話に・・・私も山吹の懐かしい風景を思い出しました。小さい頃、ご近所の板塀から毎年・・・八重の山吹が咲き乱れていた事を。
独特の香りも憶えていて、、、やはり私も同じ様な思い(最近は余り見かけないという・・・)でしたので 何だか嬉しいような、ビックリ!な感じで読んでおりました。  有難う〜!
ウルフのスナフ
URL
2008/04/13 20:44
最近街の中で見かける黄色い花はマーガレットみたいな外国産の黄色い花ばかり。
淋しくなりましたな。

2008/04/13 22:47
ご無沙汰していました。
久しぶりに読みふけりました。
ここ数年やはり、季節の変化や日々の環境の中で自分が育った時代と
違う事を子供を育てていると感じる事が多くなりました。
兄弟ともいい中学校に恵まれてはいます。
幸か息子達はそのサッカー部の教師の様な人にめぐり合っていませんが、
逆にミスターサエグサの様な教師にも出会っていません。

色んな事が機械化され無機質な時代です。
だからこそ風さんの写真やお話が心癒される時間を与えて
頂いています。
クッキー
2008/04/13 23:12
なかなか難しい世の中になってしまいましたね。
大事なものをどこかに置き忘れてきてしまったような気がします。
急ぐ必要はないので、もうそろそろゆっくり歩くことを覚えたほうがいいと思うのですが・・・。

2008/04/13 23:16
相変わらず素敵なブログで心が洗われます。
生家には一重の山吹がありました。
学校には独自の教え方をする教師がいて、
私は60年代生まれですが、
ゆとり教育を享受できたと思っています。
ゆんぴょん
2008/04/14 00:25
どうもありがとうございます。
実家に一重のヤマブキが?・・・それは素敵ですね。
今頃咲き誇ってますね。

2008/04/14 07:32
少女の奥ゆかしさは教養の高さから
自然と生まれ出たもの・・

風さんのお人柄も、良きゆとり教育が
授けてくれた、教養から生まれ出たものでしょう。
私は、といえばストレートに現実と向かい過ぎている
生活ぶりで・・
一瞬、別の世界に入る事ができ、心がホッとしました。




nya
2008/04/14 08:09
もしかして探し物をしてるんじゃありません?
夢の世界へ行けるといいんですが・・・(^-^ )

2008/04/14 18:56
風さん!
ポチポチポチしに来ました。
特に・・・写真、教育論、社会問題に・・・・
あれッ!!
全部だ〜〜(笑)
ついでに又
風さんの、 
他の写真も眺めて帰りますね。
ウルフのスナフ
URL
2008/04/15 15:48
どうもありがとうございます。
それにしてもランキングってなかなか上がんないですねえ〜

2008/04/15 18:03
『風さんのようなブログの中身が本物』は、分る人には分りますから、ランキングは放って置いてマイペースが良いかと思います。私前に感じましたがナンか〜、、お祭り的な裏があるようで???。。。私は大分前に降りちゃいましたけども(笑)
ウルフのスナフ
URL
2008/04/16 09:25
ハハハ、確かに、裏がありそうですね。それも組織的な・・・。
まあ、私も戯れ事に登録してあるだけですから、あまり気にしてません。ヽ( ´ー)ノ

2008/04/16 18:00
今、風さんとこの
[富士山の自然を散策]
して来たばかりで〜す♪
カラマツ林はとても爽やかでした、
ホタルブクロが
可愛くてたまりませんでした。
とっても気分が爽快になれました!
風さん、ありがとう〜〜〜。
ウルフのスナフ
URL
2008/04/16 20:31
富士山のカラマツ林はいいですよ〜。綺麗だし爽快だし・・・
ヤマホタルブクロは富士山のアイドル的存在です。

2008/04/16 22:30
風さんこんばんは。
きょうはさっきから・・・・・
風さんの『鳥』を何度も眺めておりました。
そしたら、
何とか私も
鳥の群れの仲間に成れました!
にわかに・・・
嬉しさがこみ上げて来て
私も一緒になって
バサバサと羽を広げ
波間に浮かんだり
舞い上がったり
チョット高い位置から
急降下も
出来ました!
小魚も獲りました
とても・・・
とても・・・
楽しくて
嬉しかった。
皆を見習って
思い切って
やってみれば・・・
頑張れば・・・
出来るもんだな〜と
ワクワクしながら
飛んでいました。     ウミネコになったウルフでした’(笑)
ウルフのスナフ
URL
2008/04/17 20:53
お早う御座います。
ブログ3周年記念品を受け取りに来てください’(baku笑)
ウルフのスナフ
URL
2008/04/19 12:04
風さん、お早う御座います。
今朝は・・・
『夢一夜』を拝見いたしました。
命の尊さを思い、
感動しました。
ありがとう〜!!!!
ウルフのスナフ
URL
2008/04/23 10:33
ウルフさん、度々恐れ入ります。
夢一夜?・・・そう言えば、去年の夏、月下美人の開花をフィルムカメラで写して、まだそのまんまにしてあることを思い出した。(>へ<)
フィルムカメラの画質は柔らかくていいんですよね。
そろそろ現像に出さねば・・・。(;´д` )

2008/04/23 17:00

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