故郷(ふるさと)を離れて眠る兵士らよ英霊よりも野仏であれ

 故郷(ふるさと)を離れて眠る兵士らよ英霊よりも野仏であれ (2016年8月14日付・東京新聞・東京歌壇=東直子・選)

 私の母はすぐ下の弟をニューギニアで亡くしていた。
 私が小学生だった頃、「お腹すいた。何かない?」とおやつをねだると、母はよく繰言のように呟いていたものである。「アキラも腹を空かせて死んだんだろうなあ~。」 「あの子も私の顔を見さえすりゃ、よく腹減った腹減ったと言ってたよ。」
 早くに母親(私の祖母)を亡くした母は、弟たちに対し母親代わりに接していたようだ。
 「ワタシャ、ニューギニアに行きたい。あの子は靖国なんかにはいない。あの子はニューギニアにあるんだ。私はニューギニアに行きたい。」 「あの子は戦死じゃない。きっと飢え死にしたんだ。餓死させられたんだよ。」と。

  母の言っていた靖国、ニューギニア等々の言葉の意味は小学生の私には良く分からなかったが、母の弟を思う気持ちは脳裏に焼き付いていた。
 母のニューギニア詣では叶えられなかったが、近年の、両陛下が重ねられてきた慰霊の旅に込められたお気持ちを鑑みるにつけ、漸く、その頃の母の気持ちが分かるようになってきた。
 母はきっと、英霊として祭り上げられ、戦意高揚に利用されるよりも、ニューギニアのジャングルの下で安らかに眠っていてくれと思ったに違いない。
 母の代わりに、五・七・五・七・七に母の気持ちを込めて詠んでみた。
 畏れ多いことだが、丁寧に慰霊の旅を重ねられる両陛下のお気持ちは、多分このようなお気持ちであられるだろうとお察しする。
 戦争犠牲者への慰霊のあり方、現行憲法を守り抜くお覚悟、この二つは今上天皇のご聖断と私はとらえている。

 兵士らの最期の地こそ慰霊の地 心に残る象徴の行脚


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この記事へのコメント

  • 雪ん子

    最初に東京歌壇入選おめでとうございます。

    漠然としていた当時の母上様の弟様を思う気持ちに
    長い長い時を経て寄り添えるようになったということでしょうか。
    読ませて頂いていると多くの犠牲になった方々への
    慰霊の思いがこみ上げて参りました。
    今日は終戦の日 合掌
    2016年08月15日 10:47
  • 雪ん子さん、ありがとうございます。
    俳句や短歌のことは良く分かりませんが、入選ということはなんとかサマになったということでしょうか?雪ん子さんのようにカッコよく短歌や俳句を詠んでみたいと思っていましたが、漸く、足元ぐらいに届きましたでしょうか?
    2016年08月15日 11:54
  • 雪ん子

    風さんたら想像以上にお世辞がお上手のようですわね。
    私は 五七五七七の意味も分からないで生きておりますわ。
    足元なんて遠慮なさらずに 天まで届け位のお気持ちで
    これからも堂々とご披露してくださいませ。
    2016年08月15日 22:34
  • 芳しく膨らみかけし山蓮華向いし今を満ち足りており・・・こう言う歌を詠んでみたいですな。
    2016年08月16日 08:24